【貧血・だるさ】生理前の不調やPMSの原因は「隠れ貧血」?血液の質と血流から考える漢方の対策
「最近、寝ても疲れがとれないなぁ」 「生理の前になると、どうしてこんなに気持ちが不安定になったり、体が重くなったりするんだろう」
毎日の生活の中で、このような「なんとなく不調」を抱えていませんか?病院に行って血液検査をしても「特に異常はありません、基準値内ですよ」と言われてしまい、自分の気持ちの持ちようや年齢のせいにして我慢している方も少なくありません。
実は、薬局のカウンターで多くのお客様のお話を伺っていると、検査の数値だけでは見えてこない「血液のリアルな姿」が隠れていることがとても多いのです。体の中を巡る血液の質や、隅々まで届く血流の状態は、私たちの元気や心の安定に想像以上の大きな影響を与えています。
今回は、私たちが生きていく上で一番大切な「酸素」を運ぶ血液の仕組みと、生理前の不調(PMS)や、長引くだるさの背景にある原因について、優しく紐解いていきたいと思います。ご自身の体からのサインに耳を傾けるきっかけにしていただければ幸いです。
今回の内容は京都FMのラジオ番組でもお話ししたテーマです。まずは動画でも解説していますので、よろしければこちらをご覧ください。
私たちに一番大切な栄養素「酸素」と血液の主役
健康のためにサプリメントを飲んだり、食事の栄養バランスを気にしたりする方はとても増えていますよね。それは本当に素晴らしいことです。しかし、人間にとって最も重要で、片時も欠かすことができない「一番の栄養素」が何だかご存知でしょうか。
それは、「酸素」です。
どんなに高価で優れた栄養素や漢方薬を体に取り入れたとしても、体の中に十分な酸素がなければ、それらを使ってエネルギーを生み出すシステム(代謝)は一切スタートしません。私たちは呼吸によって酸素を取り入れ、それを全身の細胞に送り届けることで、初めて元気に動くことができるのです。
この命の源ともいえる酸素を、体の隅々の細胞まで送り届ける大切な役割を担っているのが、血液の中にいる「赤血球(せっけっきゅう)」と「ヘモグロビン」です。
パッとイメージしやすいように、これらを乗り物に例えてみましょう。
- 赤血球:酸素を運ぶための「輸送トラック」
- ヘモグロビン:トラックの荷台に乗って、酸素とぴったりくっついて目的地まで運ぶ「主役」
この荷台の主役であるヘモグロビンの量が減ってしまうと、全身へ運ばれる酸素の量がガクンと落ちてしまいます。すると、体の中の細胞たちが「酸素が足りなくて、元気を出すエネルギーが作れないよ」と悲鳴を上げ始めます。これが、日常的に感じる「なんだか体が重だるい」「いくら寝ても疲れが抜けない」という症状の正体なのです。
血液検査の「基準値」に潜む罠とPMS(生理前症候群)のメカニズム
ヘモグロビンの量が足りているかどうかは、病院の血液検査で調べることができます。しかし、ここに一つ、知っておいていただきたい大切なポイントがあります。
血液検査のデータを見ると「基準値」というものが書かれていますが、実はヘモグロビンの基準値は、男性よりも女性の方が低く設定されています。これには、女性には毎月の「月経(生理)」という生理現象があるため、あらかじめ出血による減少を織り込んで低めの数値が設定されている、という背景があるのです。
病気ではないから低くても大丈夫、と判断されがちなのですが、男性に比べて毎月たくさんの血液を失っているという事実は変わりません。普段から男性と同じくらい十分なヘモグロビンの量が蓄えられていなければ、生理が始まったときに一気に酸素不足に陥るリスクが高くなってしまうのです。
生理前や生理中にひどい不調を感じているのに、「検査では基準値内だから貧血ではないですよ」と言われてしまう女性の多くは、実は細胞レベルで酸素が足りていない「隠れ貧血」の状態になっている可能性がとても高いと言えます。
さらに、このヘモグロビンの減少(酸素不足)は、心のコントロールを失ってしまう「自律神経の乱れ」や「PMS(月経前症候群)」に深く結びついています。体の中では、次のような栄養素の奪い合いが起こっているのです。
体の中で起こる「栄養素の奪い合い」
- 造血での激しい消費 ヘモグロビンが少なくなると、体は「これはいけない、もっと血液を作らなきゃ!」とフル回転で動き出します。この血液を作る(造血)プロセスでは、鉄分や葉酸、ビタミンB群といった栄養素が激しく消費されます。
- 脳の自律神経に必要な栄養と同じ 実は、脳の中で気持ちを穏やかに保ったり、自律神経のバランスを整えたりするために必要な栄養素も、まったく同じ「鉄分」「葉酸」「ビタミンB群」なのです。
- 血液作りが最優先される 私たちの体には、生き延びるための優先順位があります。「自律神経を安定させること」よりも、「命を維持するための血液を作ること」の方がずっと優先順位が高いため、限られた栄養素はすべて血液作りの方へ優先的に回されてしまいます。
その結果、脳にまわされるはずだった栄養素が空っぽになってしまい、心のバランスが保てなくなってイライラしたり、涙もろくなったりするPMSの症状が引き起こされるのです。
見逃してほしくない体からのSOS
「いつものことだから」「生理前だから仕方がない」と見過ごしてしまいがちですが、以下のような症状が重なっているときは、体が深刻な酸素不足や栄養不足を訴えているサインかもしれません。
- 朝起きた瞬間から体が鉛のように重く、動くのがとっても大変
- 生理の数日前から、自分でも止められないほどのイライラや強い抑うつ感がある
- ちょっとした階段や坂道で、息切れや動悸がする
- 爪が割れやすくなったり、スプーンのように反り返ったりしている
- 立ちくらみやめまいが頻繁に起こる
- 午後になると頭が締め付けられるように痛む
これらは単なる疲労ではなく、体内の輸送トラックや荷台が不足し、脳や筋肉が酸欠を起こしているリアルな姿です。我慢を重ねてしまうと、自律神経の乱れが固定化し、慢性的な疲労感から抜け出せなくなってしまうこともあるため、早めのケアが大切です。
今日から始めたい「食養生」
体の中のトラックと荷台をしっかり充実させ、自律神経にも栄養を届けるための一番の近道は、毎日の食事を見直す「食養生(しょくようじょう)」です。造血に必要な栄養素を、日々のメニューに優しく取り入れていきましょう。
1. 質の良い鉄分をしっかり摂る
鉄分には、お肉や魚に含まれる「ヘム鉄」と、植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」があります。体への吸収率が良いのは圧倒的にお肉や魚の鉄分です。
- 赤身の牛肉や豚肉、鶏のレバー
- カツオやマグロなどの赤身の魚
これらを、手のひらに乗るくらいの量を毎日少しずつでも摂るように意識してみてください。
2. ビタミンB群と葉酸をセットで
血液の細胞が新しく生まれ変わるのを助けるために、ビタミンB群や葉酸も欠かせません。
- レバー、うなぎ、卵、納豆(ビタミンB群)
- ブロッコリー、ほうれん草、アスパラガス(葉酸)
緑の野菜とお肉・お魚をバランスよく組み合わせることで、栄養のチームワークが生まれ、体の中で効率よく血液が作られるようになります。胃腸を冷やさないよう、お野菜はスープや温野菜にして温かくして召し上がるのがおすすめです。
本当の「血液サラサラ」と赤血球の柔軟性
漢方では、血液の量が十分にあり、それがスムーズに全身を巡っている状態をとても大切に考えます。
血液は、心臓から出て太い血管を通り、最後は全身の「毛細血管」へと入っていきます。実は、この毛細血管が体全体の血管の約99%を占めており、すべてを1本につなぐと地球を2周半もするほどの長さになります。しかも、一番細い部分は髪の毛の10分の1から20分の1という、目に見えないほどの極細のルートです。
驚くことに、この極細の毛細血管よりも、そこを通り抜けようとする赤血球のサイズの方が少しだけ大きいのです。
そのため、赤血球は自分の体を「ぐにゃり」と細長く変形させながら、一列になって狭い血管を通り抜けていきます。この、赤血球が自ら形を変えて進む力を、専門用語で「赤血球の変形能(へんけいのう)」と呼びます。
よくテレビなどで「血液ドロドロ」という言葉を耳にしますよね。漢方の視点から見ると、この赤血球の変形能が落ちてしまい、硬くなった赤血球が細い血管に詰まってスムーズに通れなくなった状態こそが、本当の意味での「血液ドロドロ」なのです。
病院で処方されるバイアスピリンなどのお薬は、「血小板という成分が固まって血の塊(血栓)になるのを防ぐ」ためのものであり、赤血球を柔らかくして流れやすくしているわけではありません。 血液をサラサラと滑らかに、体の隅々まで巡らせるためには、「赤血球の変形能(柔らかさ)」と「血管自体の柔軟性」の2つが揃うことが不可欠なのです。
漢方相談では、PMSや貧血傾向のある方に対して、まずは血液の質を高めて潤いを与える「四物湯(しもつとう)」という漢方薬をベースにしながら、その方の体質(冷えがあるか、ストレスが多いかなど)に合わせて、血液を柔らかく巡らせる漢方薬をオーダーメイドでお選びしています。
「血管スコープ」で見るご自身の血流
当店のカウンセリングでは、血液検査の数値を読み解くだけでなく、爪の甘皮部分を特殊な顕微鏡で拡大してモニターに映し出す「血管スコープ」を導入しています。
痛みを伴うことなく、今まさに自分の毛細血管の中を血液がどう流れているかを、リアルタイムの映像で直接見ることができます。
- 健康な方の血管:血管がまっすぐきれいに伸びてピンの形(ループ)を描き、血液が目にも留まらないほどの心地よいスピードでサラサラと流れています。
- 不調を抱えている方の血管:血管がぐにゃぐにゃと歪んで曲がっていたり、血液の流れるスピードが遅く「ドローッ」と停滞してしまったりしている姿が見られます。
「血液の質(血液検査)」と「巡りのリアルな姿(血管スコープ)」のダブルで確認することで、今あなたの体に本当に必要な食養生や漢方薬が、驚くほどはっきりと見えてきます。
定期的にこの血流をチェックしていくと、たとえ「まだ疲れやすさは少し残るかな」という段階であっても、モニターの中の血液のスピードが上がっていたり、血管の形がきれいになってきたりする変化を目にすることができます。 自分の目で見て「あ、ちゃんと良くなっているんだな」と実感できることは、安心して養生を続けていくための大きな励みになりますよ。
まとめ
人間に一番大切な栄養素である「酸素」は、赤血球というトラックに乗ったヘモグロビンによって運ばれます。血液検査の基準値だけに惑わされず、細胞の酸欠状態である「隠れ貧血」に気づいてあげることが、長引くだるさやPMSを解決するための最初の一歩です。
そして、運ばれた酸素を全身に届けるためには、赤血球が柔らかく形を変えて、地球2周半もの毛細血管をスムーズに流れる「巡りの力」が欠かせません。
毎日の温かい食事、そしてあなたにぴったりの漢方の力を借りて、体の中に豊かで瑞々しい血液を蓄え、心地よく巡らせていきましょう。体は手をかけてあげた分だけ、必ず心地よい変化で応えてくれます。
今回の内容はYouTubeでも解説しています。動画でもぜひご覧ください。
神戸市東灘区の「漢方の桜井薬品」では、単に漢方をお渡しするだけでなく、あなたのお隣に座って、毎日の食事や生活習慣も含めた丁寧な健康相談を行っています。
- 生理前の不調(PMS)や隠れ貧血による、長引くだるさ・冷え・自律神経の乱れ
- 免疫系のトラブル(がん、リウマチ・橋本病、アトピー、コロナ後遺症など)
- 自律神経の乱れ(睡眠障害、耳鳴り・めまい、慢性疲労、起立性調節障害など)
- 年齢にともなうお悩み(更年期障害〈男女とも〉、物忘れ、目のトラブル、夜間尿、ひざの痛み、シミ・しわなど)
- 漢方ダイエット(高血圧・高脂血症・糖尿病、脂肪肝、代謝の低下、便秘、むくみなど)
病院の検査数値を見ながら、今どのような食養生や漢方が必要なのか、専門家の視点から分かりやすくアドバイスいたします。 気になる症状や、「これって年齢のせいかしら?」と思うような小さな不安でも、どうぞお気軽にご相談くださいね。

