【腎臓のSOS】夜間尿や頻尿は危険のサイン?一度悪化すると戻らない慢性腎臓病の真実

最近、夜中に何度もトイレに起きて目が覚めてしまう(夜間尿)ことはありませんか?

あるいは、日中に何度もトイレに行きたくなる「頻尿」にお悩みではないでしょうか。

「もう年齢のせいだから仕方がないかな……」と、そのままにしている方も多いかもしれません。しかし、実はその何気ない変化が、私たちの体の中でとても我慢強い臓器である「腎臓」からの大切なSOSかもしれないのです。

腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれており、多少ダメージを受けてもなかなかSOSのサインを表面に出してくれません。だからこそ、夜間の尿や頻尿といった小さな変化に早く気づいてあげることが、これからの健康を左右する大きな分かれ道になります。

今回の内容は京都FMのラジオ番組でもお話ししたテーマです。まずは動画でも解説していますので、よろしければこちらをご覧ください。

慢性腎臓病とは?腎臓の役割と重要性

腎臓が体の中でどのような働きをしているか、皆さんはご存知でしょうか?よく「おしっこを作る場所」と言われますが、その中身は24時間休みなく働く、非常に精密な工場のような存在です。

腎臓の役割を分かりやすくお伝えすると、キーワードは「濾過(ろか)」「再吸収」の2つにあります。

ドラム缶1本分をリサイクルする精密な仕組み

まず、心臓から送り出された血液は、腎臓にある「糸球体(しきゅうたい)」という非常に細かなフィルターを通ります。ここで血液の中にある老廃物や余分な水分が、ゴミとして濾過されます。

この濾過されたばかりの液体(原尿)は、なんと1日に約150リットルも作られています。これはドラム缶1本分に相当する量です。もしこれをすべて排泄してしまったら、体はあっという間に干からびてしまいますよね。

そこで、次に「尿細管(にょうさいかん)」という細い管を通る段階で、体にとって本当に必要な水分や栄養分を、もう一度血液の中へと戻します。これが「再吸収」です。

最終的に、不要なゴミだけが1日に約1.5リットルの「尿」として体の外へ出されます。体に必要なものを1%の狂いもなく残し、不要なものだけを捨てる。腎臓は、私たちの命のバランスを保ってくれる、究極のリサイクル工場なのです。

腎臓の数値が悪化する原因

なぜ、これほど精密で優秀な腎臓の機能が衰えてしまうのでしょうか。その原因を知るためには、腎臓の構造をもう少し詳しく見ていく必要があります。

先ほどお伝えした、フィルターの役割を持つ「糸球体」。漢字で「糸の、球の、体」と書く通り、実は糸のように細い毛細血管が、毛糸の玉のように丸まってできているものなのです。

この繊細な糸球体が、片方の腎臓に約100万個、両方を合わせると約200万個も詰まっています。

腎臓の正体は「血管の塊」

つまり、腎臓の正体は「血管の塊」そのものです。ということは、血管が傷つくことは、そのまま腎臓がダメージを受けることに直結します。

ここで深く関係してくるのが、以下のような生活習慣病です。

  • 高血圧(強い圧力で血管に負担をかけ続ける)
  • 高脂血症(血液がドロドロになり、流れを悪くする)
  • 糖尿病(血糖値が高くなり、血管の壁を傷つける)

高い血圧やドロドロになった血液は、毛糸の玉のように繊細な糸球体の血管を、ブチブチと引きちぎるように壊していってしまいます。

「腎臓を守る」ということは、すなわち「全身の血管をきれいに保ち、守る」ということ。このつながりを意識することがとても大切です。

注意すべき危険な症状と「eGFR」の数値

慢性腎臓病の怖いところは、一度進行して機能を失ってしまうと、残念ながら元の状態に修復することがとても難しいという点にあります。放置して最悪のケースに至ると、腎臓の代わりに機械で血液をきれいにする「人工透析」という治療が必要になります。

週に3回、1回につき約4時間、病院のベッドで治療を受ける生活は、日常生活にも大きな影響を与えます。それを避けるためには、現状の数値をしっかりと把握しておく必要があります。

健康診断でチェックしたい「eGFR」とは?

腎臓の状態を知るために、健康診断の血液検査の結果にある「eGFR(推算糸球体濾過量)」という項目をチェックしてみてください。これは、「あなたの腎臓が今、何点満点で動いているか」を示す数字だとイメージすると分かりやすいです。

eGFRの数値状態の目安
60以上ひとまず合格ラインです。
50未満「黄色信号」**です。ここが将来の運命の分かれ道になります。
15以下末期腎不全と呼ばれ、人工透析を本格的に検討する段階に入ります。

腎臓は非常に我慢強い臓器であるため、数値が50を切るあたりまでは、ほとんど自覚症状が出ません。だからこそ、健康診断の書類を見て「50」に近づいていたら、生活をガラリと変えるための本気の意識が必要になります。

日常生活でできる予防と食事の対策(食養生)

現代の医学をもってしても、一度壊れてしまった腎臓の機能を劇的に元通りにする「魔法の薬」はありません。そのため、ケアの中心になるのは日々の「食養生(食事の工夫)」です。

塩分を控えることはもちろん大切ですが、腎臓のケアで最も難しく、同時に重要なのが「たんぱく質」のコントロールです。

「何を食べるか」よりも「何を避けるか」

たんぱく質を摂りすぎてしまうと、それを分解・処理する腎臓に大きな負担がかかります。しかし、かといって極端に肉や魚を減らしすぎると、今度は筋肉量が落ちて体力が奪われ、体が弱ってしまう「フレイル(虚弱)」という状態に陥ってしまいます。

そこで一番知っていただきたいのが、「腎臓に負担をかけないたんぱく質を選ぶ」という視点です。

  • 避けるべきもの(無機リン)

ハム、ソーセージ、練り物などの加工食品や、インスタント食品、スナック菓子。これらに含まれる「無機リン」という添加物は、弱った腎臓に非常に強い負担をかけてしまいます。

  • 上手に摂りたいもの(有機リン)

加工されていない新鮮な生のお肉やお魚、大豆製品。これらに含まれる「有機リン」は、体への吸収がとても穏やかで、腎臓への負担を抑えることができます。

難しい栄養計算を始める前に、まずは「加工品をできるだけ減らし、自然な食材を選ぶ」。これだけで、あなたの腎臓を長持ちさせるための素晴らしい対策になります。

漢方・東洋医学的なアプローチ

現代医学での治療や食養生と合わせて、ぜひ知っていただきたいのが東洋医学(漢方)の知恵です。西洋医学ではアプローチが難しい段階でも、東洋医学は違った角度から腎臓のサポートを得意としています。

1. 血液の「質」を高めて、血管の負担を減らす

先ほど、腎臓は繊細な毛細血管の集まりだとお伝えしました。東洋医学では、サラサラな血液を巡らせるだけでなく、血液の「質」そのものを良くアプローチを行います。

具体的には、赤血球が形を柔軟に変えて、狭い血管の隙間をスルスルと通り抜ける力を助けます。血液がスムーズに通るようになれば、血管の塊である腎臓の負担はグッと軽くなります。

2. 「補腎(ほじん)」の漢方で予備の力を引き出す

私たちの腎臓には、普段は眠っている「予備能(予備の力)」が備わっています。

漢方には、生命力の源である「腎」の力を補う「補腎(ほじん)」という優れた考え方があります。

体質に合わせた補腎の漢方を取り入れることで、眠っている残りの力をしっかりと働かせ、腎機能の数値を維持したり、低下のスピードを緩やかにして透析を回避することを目指します。

もちろん、これにもタイムリミットがあります。血管が完全に壊れてしまう前、つまり「eGFRが50を切り始めた段階」で、本気で漢方や食養生を取り入れることが、生涯現役の腎臓を守るための一番の近道です。

まとめ

腎臓は、私たちの体の中で文句も言わずに働き続けてくれる、かけがえのないリサイクル工場です。しかし、一度大きく傷ついてしまうと、元の姿に戻すことはとても大変なことなのです。

「夜中のトイレが最近増えたな」と感じたら。

健康診断の数値で「eGFRが50近く」になっていたら。

それは、「これ以上無理をしないで、私の体を大切にして」という腎臓からのリアルなメッセージです。手遅れになってしまう前に、日々の正しい食事と、東洋医学の知恵を上手に取り入れて、大切な体を守っていきましょう。

今回の内容はYouTubeでもさらに詳しく解説しています。動画でも分かりやすくお話ししていますので、ぜひご覧ください。

神戸市東灘区の「漢方の桜井薬品」では、単に漢方をお渡しするだけでなく、あなたのお隣に座って、毎日の食事や生活習慣も含めた丁寧な健康相談を行っています。

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